抄録
フォトトロピンは植物の青色光センサーであり、発色団としてフラビンモノヌクレオチド(FMN)を持っている。FMNが光を受容すると、FMNと近傍のシステインとが共有結合を形成する。これに誘起されてLOVドメインの構造が変化し、セリン/スレオニンキナーゼドメインが活性化されることで、植物の光屈性や葉緑体光定位運動・気孔の開口のような生理作用を制御していると考えられている。
フォトトロピンは水溶性タンパク質であり、したがってLOVドメインの構造変化はその水和状態に影響を受けると考えられる。最近、我々のグループは、タンパク質の水和状態がPhy3LOV2の光誘起構造変化に対して著しく影響を与えることを、赤外分光法によって見出したので報告する。α-へリックスやβ-シートといった二次構造の構造変化は水和量に依存し、さらに、中間体S390の減衰にもまた水和量依存性が存在した。これらの結果から、Phy3LOV2の光誘起構造変化には水和水分子が不可欠であることは明らかであり、水和水分子が構造変化のためのタンパク質の揺らぎを引き起こしていると考えられる。また今回の結果から、我々はタンパク質一分子あたりに水和している水分子の数を見積もることを試みた。発表では水和水分子の数とPhy3LOV2の構造変化および時定数との関係を中心に、LOVドメインの構造変化に対する水和水分子の重要性を議論したい。