抄録
我々はイネの開花機構を明らかにするため、短日植物に見られる光中断による花成遅延現象を利用した研究を展開している。イネに対して暗期の中央で白色光による光中断処理を一度行った場合、開花のスイッチとされるHd3a遺伝子の急激な発現抑制が観察された。また、フィトクロム欠損変異体を用いた解析から光中断においてフィトクロムBがHd3a遺伝子の発現調節に関係していることが示唆された(Ishikawa et al. 2005)。本発表ではイネの開花におけるフィトクロムの作用を明らかにすることを目的とし、光中断時における光源の波長を限定した実験を行なった。その結果、光中断によるHd3aの発現低下と開花遅延は赤色光によって確認されたが、遠赤色光では確認されなかった。さらに1952年にBorthwickらによって発見された光中断における、光可逆的開花反応にはフィトクロムBとHd3aが関与していることを見出した。これらの実験からHd3a遺伝子の発現様式を明らかにし、フィトクロムBからのシグナルがHd3aの転写制御機構を調節していることについて考察したい。