抄録
C4植物はRubiscoの周りにCO2を濃縮できるので、強光や乾燥環境下でも高い光合成能を維持できる。一方で、弱光下ではC4光合成の能力が十分に発揮されず、効率の良い光合成を行なう事ができない。弱光下におけるC4植物の光合成効率を調べるために、C4植物(Amaranthus cruentus,NAD-MEタイプ)の葉を用いて、CO2の漏れ率(CO2 leakiness: 維管束鞘細胞から漏れたCO2/PEPCによって固定されたCO2)と、in vivoのC4光合成酵素活性の光依存性を調べた。
200 μmol photon m-2 s-1以上の強い光を照射した時、CO2の漏れ率は0.3でほぼ一定であった。一方で、200 μmol photon m-2 s-1以下の光照射では、光が弱くなるとともに漏れ率が増大し、80 μmol photon m-2 s-1の光強度におけるCO2の漏れ率は0.45であった。Rubiscoの活性化率の光依存性を調べると、CO2の漏れと良い対応関係を示し、200 μmol photon m-2 s-1以下の光強度で活性化率が低下した。これらの結果は、弱光下におけるCO2の漏れの増加は、Rubiscoの活性化率の低下が主な原因である事を示唆している。今後、PEPCの活性化状態とPPDKの活性化率を測定する事により、これらのC4光合成酵素活性が、どの程度CO2の漏れ率に影響しているかを調べる。