日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第47回日本植物生理学会年会講演要旨集
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樹木の幹は光屈性により能動的に屈曲する:屈曲機構としてのあて材形成と光感受部位
*松崎 潤益守 眞也丹下 健
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p. 743

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抄録
伸長を停止し肥大成長中の木本茎について、重力屈性は知られているが、光屈性による能動的な屈曲は報告されていない。木本茎の光屈性による能動的な屈曲の存在と、その屈曲機構について検討した。人為的に茎を傾斜させたミズナラ1年生実生苗に、植物育成用蛍光灯を側方から茎の傾斜面に垂直に照射する処理区と、茎の傾斜面に平行に照射する処理区を設けた。垂直照射区では光屈性の作用方向が重力屈性や重力の作用方向と直交するため、光屈性による反応を分離して解析できる。垂直照射区の1年茎が、平行照射区と比べ光源方向への有意な屈曲を示した。屈曲した部位の横断面を観察したところ、肥大成長とあて材形成が光源側に偏っていた。伸長を停止した木本茎において、重力屈性の場合と同様に、あて材などの材形成の偏りにより能動的に屈曲することで、正の光屈性を示すことが明らかになった。次に、光屈性による木本茎の能動的な屈曲に寄与する光感受部位について検討した。屋外の全天光下で、南側へ人為的に茎を傾斜させたミズナラ1年生実生苗の1年茎の東側半面、あるいは東側に着生する主軸の葉をアルミ箔で被覆して生育させたところ、対照区と比べ西側への有意な屈曲を示した。当年茎の東側半面や、東側に着生する側枝の茎や葉を被覆した処理区では、茎の有意な屈曲は見られなかった。木本茎自体と主軸に着生する葉が光刺激の感受に寄与していることを示している。
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© 2006 日本植物生理学会
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