抄録
オオムギ低温応答性遺伝子blt101 (GenBank Z25537)のイネホモログ遺伝子OsMLT1 (AY554051)を、発芽後7日の若いイネの乾燥ストレス・ディファレンシャルクローンの中に見い出した。OsMLT1cDNAは547bpのORFをもち、55個のアミノ酸残基をコードし、推定分子量が6.0kDaで推定等電点が6.9であった。また、OsMLT1の推定アミノ酸配列は、オオムギblt101遺伝子のそれと約54%の相同性を示した。遺伝子データベースの相同性検索の結果、イネには複数のオオムギblt101遺伝子のホモログ遺伝子が存在することが分かった。ゲノムDNAをBamHI, BglII, EcoRI, HindIIIで消化し、OsMLT1の3-非転写領域の塩基配列から作製したプローブを用いてサザン解析を行った。その結果、いずれのレーンにも単一のバンドが検出され、プローブの遺伝子特異性が証明された。この遺伝子特異的プローブを用いて、乾燥ストレス・ディファレンシャルスクリーニングで得られたOsMLT1の環境ストレス応答性を調べた。予想されるようにOsMLT1は乾燥ストレスによって強く発現することが確認された。さらに低温応答性を詳しく調べると、OsMLT1は5℃の低い低温には全く応答せず、12℃の穏やかな低温にのみ強く応答するという新しい知見が得られた。