抄録
shaggy-like kinaseは高等動植物から酵母まで保存されている細胞内シグナル伝達に関わるタンパク質リン酸化酵素であり、植物では花の形態形成、植物ホルモンブラシノステロイドのシグナル伝達に関与することが知られている。
我々は、マクロアレイ法により低温に曝したコムギクラウン組織中で遺伝子の変動を調べたところ、シロイヌナズナの shaggy-like kinaseである AtSK1, AtSK2, AtSK5と高い相同性を示す新規shaggy-like kinase遺伝子(TaSK5)の発現量が増加することを見いだした。ノーザン解析の結果、TaSK5は低温及び塩処理により顕著に誘導される一方、ABA及び乾燥処理における誘導は僅少であった。TaSK5の機能を明らかにするため、塩及び低温に対し感受性を示す出芽酵母のshaggy-like kinase破壊株(Δmck1)を用い相補試験を行ったところ、塩及び低温耐性が復帰した。また、TaSK5を過剰に発現させたシロイヌナズナを作出した。TaSK過剰発現株は、通常の条件下では野生株と顕著な表現型の差はみられなかったが、乾燥に対して耐性を獲得した。しかし、予想に反して塩及び低温耐性においては顕著な差はみられなかった。マイクロアレイ解析により、TaSK5過剰発現株では非生物ストレスに応答する遺伝子が構成的に発現していることが明らかとなった。