抄録
中国北部の塩類土壌地帯に自生するSuaeda salsaの2mM K-0,2,50,100,200mM NaClと2mM Na-0,2,50,100,200mM KClに対する生育反応ならびにNa・K吸収特性について検討した。2mM Na-2mM K区の地上部乾物重を100とした相対指数でNaClとKClに対する生育反応を評価すると、NaCl実験では50,100mMで最大の生育を示し、200mMでも2mMの生育とほぼ同等であったのに対し、KCl実験では2mMで最大の生育を示し、50,100mMでやや低下し200mMでは著しく低下した。各実験でのNa,K含有率を比較すると、NaCl濃度の上昇による地上部のNa含有率の上昇より、KCl濃度上昇による地上部のK含有率の方が高い結果となった。一方、NaCl濃度上昇による地上部K含有率の低下とKCl濃度上昇によるNa含有率の低下を比較すると、K含有率は緩やかに低下したのに対してNaは急激に低下した。さらに、培養液のNa/K比を植物体のNa/K比で割った両元素の根における選択性の比較よりNaよりKに対して選択性が強いことが示された。これらの結果から、高Na-低K濃度からなる塩類土壌に適応したS.salsaは、高NaCl低K濃度条件下でもKを十分に吸収するために、強いK吸収能を保持しており、K濃度が高い場合にはNaに対して強い選択性を発揮すると考えられた。