抄録
埋立焼却灰は水との接触により、複合的な負の化学因子(高pH、塩、重金属)を環境中に溶出させる可能性があり、灰由来の有害因子が周辺に生息する生物に与える影響を調べることは極めて重要である。私達はイネを用い、様々な種の灰溶出液をそれぞれ水耕液で希釈した試験液を根に投与し、1日後における葉身の光合成活性の減少を毒性の指標に灰溶出液の安全性評価を行ってきた。その過程で、毒性の強い灰溶出液にはpHが著しく高い傾向(試験液pHが11近傍)、Ca、Cu、Pbを多く含む傾向が見られた。そこで本研究では、弱酸性(pH5.5)、強アルカリ性条件(pH11)で試験液近傍の濃度でのCaCuPbの3元素がイネに与える毒性、その毒性に関与する因子についての解析を試みた。具体的には、両pH条件で水耕液に、CaCl2(30 mM)、CuCl2(130 µM)、PbCl2(45 µM)の3化合物のうち0(Control)~3種(CaCuPb区)を加えた区を設定し毒性を比較した。その結果、両pH条件でCaCuPb区は毒性を示し、その毒性は主にpH5.5条件では(Cuの毒性)と(CaによるCuの毒性緩和効果)の和、pH11条件では(強アルカリ性自体の毒性)と(Caによる毒性)の和によると示唆された。Pbは本研究ではいずれのpH条件においても、毒性に顕著な影響は与えなかった。今後、イネ植物体における元素蓄積量の変化からも考察を進める予定である。なお、本研究は文部科学省リーディングプロジェクトの支援による。