抄録
植物の葉の展開方向や展開角度は様々で、種によって固有の位置を保つように見られるがそれらが何によって決められているのかは明らかとなっていない。私達はこれまでの解析から、植物体を正立状態で暗所に置くと葉が立ち上がり、上下逆の状態で暗所に置くと葉が反り返るという葉の重力応答を明らかにしてきた。また、暗所での葉の動きは、負の重力屈性運動と、シュート軸に対して閉じるように動く暗所傾性運動との、足し合わせであることも明らかにしてきた。
以上の葉の動きは連続光条件下で見られないことから、光によって制御されていると考えられる。そこで、野生型シロイヌナズナのロゼット葉に対し、大型スペクトログラフ(基礎生物学研究所)で5波長の単色光(450, 520, 630, 370, 730 nm)をそれぞれ9時間照射し、照射前後の葉の動きを比較した。また、赤色光(660 nm)、青色光(470 nm)を照射しながら植物体を上下逆にし、葉の動きを観察した。赤色光照射下でも植物は重力応答反応を示したが、葉が立ち上がる暗所傾性反応は示さなかった。一方、青色光照射下では暗所傾性反応は示したが、重力応答反応は示さなかった。このことから、赤色光照射下では暗所傾性運動を、青色光照射下では重力屈性運動を制御している可能性がある。以上の結果より、シロイヌナズナの葉は2つの異なる制御系の総和によって位置決定されていることが明らかとなった。