日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第47回日本植物生理学会年会講演要旨集
会議情報

シロイヌナズナのUPF1 NMD RNA helicase は生育に必須でその変異は糖シグナル応答を含む多面的表現型を示す
*用稲 真人小内 清三田 悟大藤 雅章中村 研三
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 851

詳細
抄録
Nonsense-mediated mRNA decay (NMD)は真核生物が備えるpremature termination codon (PTC)を持つmRNAの排除に関わるmRNA監視機構である。NMDの主要因子であるUPF1 RNA helicase は真核生物に高く保存されているが、植物UPF1の機能については不明であった。我々が先に単離した主要β-アミラーゼ遺伝子 (At β-Amy)の糖誘導性発現が低く抑えられたlba1変異株は、アントシアニンやクロロフィル含量低下に加えて、花成促進、短日条件下での生育阻害、種子重量増加、発芽のグルコースやABAに対する高感受性とマンノースに対する耐性、といった多面的な表現型を示した。lba1変異は5番染色体の61-kbの領域にマップされ、その全塩基配列を決定したところ、AtUPF1遺伝子コード領域に一塩基置換が見つかった。lba135S::AtUPF1-cDNAを導入したところ、種々の表現型が相補され、lba1の多面的表現型はAtUPF1の1アミノ酸置換によると考えられた。AtUPF1遺伝子の内部エキソンにT-DNAが挿入された破壊株のホモ体はseedling lethalの表現型を示し、この致死性も部分的に相補されたことから、AtUPF1は生育に必須であることが示された。最近、動物や酵母のUPF1 はNMD以外にも翻訳の効率や正確さ、テロメア維持、DNA損傷応答、擬遺伝子の発現抑制、RNAiに関与することが報告されている。AtUPF1は個体成長の様々な段階で重要な役割を担うことが示唆され、lba1は植物UPF1の機能解析に有効と思われる。
著者関連情報
© 2006 日本植物生理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top