抄録
[目的]ブラシノステロイド(BR)は双子葉植物から単子葉植物まで広く保存される植物ホルモンであり、BR欠損が矮性形質を示すことなどが明らかにされている。また、分子レベルでBR受容体や生合成酵素など主要因子は双子葉と単子葉両植物種間で比較的高い共通性が認められる。我々はこれまでにBR生合成阻害剤Brz耐性を指標にBR情報伝達が活性化した突然変異体の探索を試みてきている。今年度は、植物間に普遍的に存在するBR機能発現の分子機構の検討を深めることを目的として、単子葉植物イネに対するBrzの作用条件を検討し、イネにおけるBrz耐性突然変異体のスクリーニングの試みを行った。
[方法・結果]イネ種子を1/2MS液体培地水没条件下で暗所発芽させると、子葉鞘は水面に達するまで徒長する。この条件下で、Brz を添加すると、20 μM濃度において無処理条件の25%程度の矮性子葉鞘長となるが、ブラシノライドを共存させた条件下では子葉鞘長の矮性は濃度依存的に徒長型へと回復することが明らかになった。このBrz水没発芽実験条件下でも、野生型に比べて子葉鞘が徒長する変異体をイネにおけるBrz耐性突然変異体候補とした。農業生物資源研究所において作出された日本晴アクチベーションタギングライン約1200ラインからスクリーニングを試みた結果、数ラインを一次候補として同定した。