抄録
オーキシン一次応答タンパク質 Aux/IAA の多くには保存されたドメインが四つあるが、シロイヌナズナの IAA20 サブファミリーに属する3つのタンパク質、 IAA20 と30と31ではドメインIとIIの保存性がくずれていて、特に IAA20 と30には Aux/IAA のオーキシン応答性に必須と考えられているドメインIIが保存されていない。また、核局在性シグナルも曖昧である。これら非典型的 Aux/IAA タンパク質の機能を明らかにするために、野生型の IAA30 と31を35Sプロモーターで駆動させた過剰発現体を作製し、その表現型を調べた。その結果、 IAA30 や31の両過剰発現体では、芽生えの胚軸と根において屈地性の低下や側根形成の低下が見られ、成体でも花茎の屈地性の低下や葉の偏差成長異常などの共通した異常が観察された。また、芽生えの根で屈地性異常を示したものは、根端の構造にも異常が見られるとともに、側根形成ではオーキシン添加培地上で生育させた野生型とよく似た表現型を示した。また、 IAA31 過剰発現体では、頂芽優勢の低下や花茎形成時期の遅延などの異常が見られたが、 IAA30 過剰発現体ではそのような欠陥は見られなかった。以上のことから、ドメインIIを持たない Aux/IAA タンパク質もオーキシン信号伝達に関与していることや、タンパク質の機能において重複している働きと固有の働きがあることが示唆された。