日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第47回日本植物生理学会年会講演要旨集
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シロイヌナズナにおけるスペルミンシグナル伝達経路の解析
三ッ谷 佳子高橋 芳弘トーマス ベルベリッヒ宮嵜 厚松村 英生高橋 英樹寺内 良平*草野 友延
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p. 882

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抄録
移動手段を持たない植物は、巧妙かつ独自の環境適応能力を獲得してきたことが明らかになりつつある。抵抗性を持つ植物は、ある種の病原体の感染を認識すると、細胞死を伴う過敏感反応(HR)を誘導する。HR反応には、サリチル酸、ジャスモン酸、エチレン等のシグナル分子が関与しているが、我々はタバコの病原体防御応答の際にポリアミンの一つであるスペルミン(Spm)がシグナル分子として機能することを示してきた。
今回、このSpmのシグナル分子としての機能の普遍性を検証すると共に、さらに深く分子基盤を理解するため、モデル植物であるシロイヌナズナのSpm応答遺伝子をSuperSAGE法を用いて同定した。Spm応答遺伝子の内9割近くの遺伝子が、キュウリモザイクウイルス(CMV)誘発HRの際においても応答性が確認された。また、Spmは、レドックス構成成分、タンパク質再生・分泌・分解、防御応答等に関する遺伝子発現を制御していた。さらに、Spmは転写因子をコードすると予想される6遺伝子の発現を活性化したが、その内3つの遺伝子産物は、H2O2シグナル経路の構成成分であることが最近報告されている。このことはSpmシグナル経路にH2O2シグナル経路が内包されていることを支持する結果と考える。今回得られた結果に基づき、シロイヌナズナにおけるCMV感染時のSpmシグナル伝達経路の役割を考察する。
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© 2006 日本植物生理学会
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