抄録
現在、メタボロミクスの分野の研究は質量分析法による計測が主要となっている。しかし、我々は多次元NMR法の高い物質同定能・非侵襲計測能といった潜在能力を惹き出しながら、従来のメタボロミクスにはない新しい概念を構築したいと考えている。
まず、物質同定能を高めるために水溶液・有機溶媒系について標準化合物の1Hおよび13C化学シフトデータベースの構築を進めている。その上で、植物の抽出物の多次元NMRとデータベースの検索でシグナル帰属(物質同定)を行う戦略をとっている。これまでに13C均一標識化したシロイヌナズナやポプラの抽出物を用いて、組織特異的なアミノ酸蓄積を観測する事ができた。
また、双極子相互作用による異方性を消去するマジック角回転 (MAS) 法を導入する事により、抽出操作を行わずにポプラの茎・葉をそのままNMR計測管に挿入し、非侵襲計測する試みも行った。抽出物に比べ脂質や糖鎖領域のシグナル強度が強く、従来のメタボローム解析で扱われていない高分子物質が観測される可能性が示唆された。本発表では、MAS法の導入により植物組織内における代謝産物の存在状態解析や、高分子化合物も含めた代謝産物解析に展開できる可能性についても議論したい。