抄録
根からのクエン酸放出はAlストレスに対する耐性機構として知られている。クエン酸放出能力の高い植物はクエン酸を余らせるように代謝を改変している。その中で鍵となる酵素の1つがクエン酸の異化代謝にかかわるNADP特異的イソクエン酸脱水素酵素(NADP-ICDH)である。シロイヌナズナにおいて、NADP-ICDHを発現抑制することでクエン酸放出レベルが増加し酸性土壌における生育が改善することを、昨年度の年会で報告した。本技術を製紙産業上有用な樹木であるユーカリに適用し、その効果を検討した。ユーカリ根のESTからNADP-ICDH遺伝子を単離し、3’-UTRを用いたRNAi法により発現抑制体を作製した。組換え体16ラインの中から酵素活性がもっとも抑制されていた2ラインを選抜し解析に使用した。組換え体の根のクエン酸濃度は野生型の1.4-1.6倍に増加していた。また、クエン酸放出量は組換え体において1.5-1.7倍に増加していた。酸性土壌で6ヶ月間栽培したところ、地上部および根部ともに生育の改善が認められ、個体あたりの新鮮重は野生型の1.5倍に増加していた。以上のことは、NADP-ICDHの発現を抑制することでクエン酸放出強化による酸性土壌耐性をユーカリに付与できたことを示している。