抄録
植物は、光合成により大気中のCO2を固定してデンプンに変換するまでに多くのプロセスを含む。植物の炭素代謝はソース能力、シンク能力および転流能力のバランスによって成り立っている。その中でも、植物の光合成炭素代謝おいおび生産性向上を目指すには、光合成能(CO2固定)を制御することが最も重要であると考えられる。
カルビン回路を構成する酵素の中で、FBPase、SBPase、GAPDH、PRKの活性は光還元力により厳密に制御を受けることから、回路の制御に重要であると考えられる。特に、FBPaseとSBPaseは他のカルビン回路構成酵素に比べて活性が低く、アンチセンス植物を用いた解析からも律速因子であることが示唆されている。さらに、PRKおよび GAPDHはCP12とよばれる小タンパク質を介した解離会合によっても調節されている。従って、これら酵素タンパク質はカルビン回路を含むソース・シンク器官の炭素代謝を制御する上で非常に重要であると考えられる。
そこで、これら遺伝子を導入した形質転換植物およびラン藻を用いて光合成能およびソース・シンク器官の炭素代謝へ及ぼす影響を検討した。さらに、光合成増大および生育促進に関連する因子を網羅的に解析した。これらの結果から、カルビン回路の制御によりCO2固定能および生産性の向上を目指すためには何が重要であるのかを今後の展望も交えて議論したい。