抄録
花の発生制御に関するABC モデルと,メリステムの維持制御に関するCLAVATAシグナル伝達系によるフィードバックループモデルは,植物発生学の金字塔の1つである.これらは,主にシロイヌナズナの分子遺伝学的研究からもたらされ,ABCモデルは真性双子葉植物にひろく適用されることが示されてきている.しかし,単子葉植物における知見はまだ少ない.一方,メリステムの維持制御に関する遺伝学的研究は,シロイヌナズナ以外の植物では一部を除いてほとんど報告例がない.
私たちの研究室では,単子葉類のモデル植物であるイネを研究材料として,発生を制御する遺伝子の機能とその進化について研究を進めている.これまでの研究から,イネの花の発生においても,基本的にはABCモデルが適用されること,YABBY 遺伝子である DROOPING LEAF が心皮の発生を制御していること,クラスCの遺伝子の機能が機能分化していることなどを明らかにしてきた (Yamaguchi et al. Plant Cell 16: 500-509, 2004; Yamaguchi et al. Plant Cell, in press). 一方,メリステムの維持に関しては,CLV シグナル伝達系とほとんど同じ機構がイネにおいても保存されているが,その一方で,イネに独自の制御系が存在することも示唆されている (Suzaki et al. Development 131: 5649-5657, 2004).
本シンポジウムでは,これらの知見をまとめ,進化的側面から,イネの発生を制御する遺伝子について報告したい.