抄録
完全長cDNAは、遺伝子本体であり、種々の植物での整備は、将来の農業を見据えた場合の戦略として重要なリソースである。完全長cDNAの活用法としてのひとつとして、植物の機能付加が挙げられる。機能を持ったタンパク質産生は、完全長cDNAのみが行えることである。完全長cDNAを別々に植物へ導入することで、総合的な機能的な付加を起こさせ、種々の範疇での有用形質選抜や、基礎的な形質の選抜に用いることが可能になる。特に生物内には、機能的、構造的に重複した遺伝子ファミリーが存在するため、従来の欠損型の変異体では、見出せない形質が多い。このような形質は、機能付加により見出した形質を元にしての解析が可能になる。私たちは、完全長cDNAを個々に植物内で発現させ機能付加を系統的に起こさせる遺伝子機能探索のツールとしてのシステム(フォックスハンティングシステム)を開発した。私たちはシロイヌナズナの約10,000種類の独立した完全長cDNAをシロイヌナズナへ導入したナズナFOXライン約10,000系統と、(独)農業生物資源研究所で収集した約13,000のイネ完全長cDNAをシロイヌナズナへ導入したイネFOXラインを約5,000系統作成している。これらのリソースは、形態形成、光環境、ストレス耐性といった種々の選抜を行なうことで有用遺伝子探索に用いている。研究に用いる変異体リソース整備とそれらの活用について説明する。