日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
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トリエン脂肪酸の生成を抑制した形質転換シクラメンの耐暑性
*甲斐 浩臣松田 修池上 秀利平島 敬太射場 厚中原 隆夫
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p. 484

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抄録
葉緑体膜の脂質を構成するトリエン脂肪酸の含有量は、植物の温度適応性と密接に関係しており、その含有量を減少させることで、耐暑性を付与できることを示した事例が報告されている。トリエン脂肪酸は、葉緑体および小胞体に局在するω-3デサチュラーゼによって合成される。本研究では、冷涼な気候を好むシクラメンに耐暑性を付与することを目的として、シクラメンの葉緑体型ω-3デサチュラーゼ遺伝子(CpFAD7)を同定し、この遺伝子の発現をRNA干渉により低減させた形質転換シクラメンを作出した。得られた形質転換体では、CpFAD7 mRNAの蓄積がほぼ完全に抑制され、葉における主要な脂肪酸に対するトリエン脂肪酸の含有量が、栽培種における約50%に対して、約2%にまで減少していた。後代の低トリエン脂肪酸個体において耐暑性を評価した結果、栽培種が萎れ症状を示す38℃、5日間の高温処理でも萎れ症状が顕著に緩和された。トリエン脂肪酸の含有量は温度適応性だけでなく、土壌乾燥に対する適応性とも関わっていることが示唆されている。しかしながら、12日間の無灌水処理により耐乾燥性を評価した結果、低トリエン脂肪酸個体の萎れ症状には、栽培種との間に有意差が認められなかった。
以上の結果より、シクラメンではトリエン脂肪酸の含有量を抑えることにより、耐乾燥性を低下させることなく、耐暑性の付与が可能であることが明らかになった。
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© 2007 日本植物生理学会
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