抄録
我々は、Thermosynechococcus vulcanus RKNにおける低温培養時の菌体の凝集現象と、セルラーゼ添加による凝集解消を報告しており、これらの関係性に着目している。また、セルロース合成酵素遺伝子ホモログの破壊株における、低温培養時の時間依存的な凝集度の測定の結果、凝集はTvtll0007破壊株では起こらず、Tvtlr1795破壊株では素早く、Tvtlr1930-33破壊株では野生株同様に起こることも分かっている。
今回は、この低温凝集が上記遺伝子の発現レベルに起因するのかを探るため、定量的RT-PCRによるmRNA発現解析を行った。なお、低温凝集は約48h後には完了した。低温培養0hを基準として、Tvtlr1795、Tvtlr1930-33の発現は1時間後には大きく上昇し、その後やや低下するものの高いレベルを保った。一方、Tvtll0007の本来の発現レベルはTvtlr1795、Tvtlr1930-33に対して高かった。また、6時間以降では通常温度に比べ低温での発現が有意に高かったものの、誘導の程度は大きくなかった。このことから、低温凝集の主な要因としては、これらの遺伝子発現の誘導だけではなく、凝集に必須のTvTll0007の酵素活性の上昇なども示唆される。よって、現在セルロース合成活性のin vitro、in vivoにおける測定を試みている。