抄録
シロイヌナズナの光屈性は青色光受容体phototropin (phot1とphot2)に制御される。その下流のシグナル伝達因子としてNPH3とRPT2が単離・同定されている。これらはタンパク質間相互領域BTB/POZドメインとcoiled-coil構造をもち、phot1複合体においてscaffold タンパク質として機能している。しかし、その生化学的機能は未だ明らかになっていない。我々はNPH3が暗所でリン酸化され、phot1を介して青色光依存的に脱リン酸化されること、RPT2が脱リン酸化したNPH3を含む複合体に、より強い結合活性を示すことを明らかにしている。今回、NPH3 リン酸化サイトのいくつかを同定したので報告する。同定した二つのリン酸化サイトに対する抗リン酸化NPH3ペプチド抗体を作成し、発現解析を行なったところ、これらのサイトがphot1によって青色光依存的な脱リン酸化されることが示された。また、プロテインフォスファターゼ2A (PP2A) とPP1の阻害剤であるオカダ酸、およびPP1阻害剤トートマイシンを用いてNPH3の脱リン酸化を解析したところ、PP2A がNPH3の脱リン酸化に関与していることが示唆された。これらの生化学的解析結果を踏まえ、NPH3の青色光依存的な脱リン酸化機構および光屈性におけるNPH3とRPT2の機能を議論したい。