抄録
落葉樹の春先の未成熟な葉、あるいは晩秋の老化が進行している葉では光合成能力が低く、さらに北方林では春先や晩秋には温度が低くなることがあり、ストレスを受けやすくなり、光ストレスに対する防御応答が見られると考えられる。そこで北海道立林業試験場(美唄市)の実験林から、グイマツ、カラマツ、ミズナラ、シラカバ、ハウチワカエデの5種の葉を2003年から2005年の3年間、5月から10月まで1ヶ月に1回採取し、葉のクロロフィル量、窒素量を光合成能力の指標として、キサントフィルサイクルの色素量、活性酸素消去系の酵素である膜結合型のアスコルビン酸ペルオキシダーゼ(APX)活性をストレス防御の指標として、これらの季節変化を調べた。葉の乾燥重あたりの窒素量は、葉の展開に伴って減少した後、ほぼ一定の値を保ち、落葉直前に大きく減少し、クロロフィル量は春先から夏にかけて増加し、落葉直前に減少した。一方、クロロフィルあたりのキサントフィルサイクルの色素量は、展葉時期や落葉直前に高い値を示した。キサントフィルサイクルの脱エポキシ化の割合は、樹種や年度による違いはあるものの、特に広葉樹で落葉直前に高くなる傾向が見られた。APX活性は、春先に若干高くなるものや落葉直前に大きく増加するものがあった。以上の結果から、光合成能力が低い時期のストレス防御にキサントフィルサイクルやAPXが働いている可能性が示唆された。