抄録
シロイヌナズナには、花成を制御する4つの経路 (光周期経路、自律経路、春化経路、ジベレリン経路) が存在する。複数の制御経路からの情報は、3つの花成経路統合遺伝子遺伝子FLOWERING LOCUS T (FT)、LEAFY、SUPRESSOR OF OVEREXPRESSION OF CO 1の転写制御を介して統合されると考えられてきた。
TSFは、FTとアミノ酸配列レベルで82% という極めて高い相同性を有することから、花成制御に関与し、かつ経路統合遺伝子としての役割を果たす可能性が高い。しかし過剰発現体の報告を除いて、TSFの花成制御における役割は検討されていなかった。発現解析により、TSFはFT同様に光周期経路ならびにFLCの機能を介して春化経路および自律経路の転写制御下にあることが判明した。また変異体の表現型は、実際に野生型においてTSFが花成時期の決定に寄与することを示唆した。以上より我々は、TSFが花成を制御する複数の情報を転写レベルで統合する花成経路統合遺伝子であると提唱した。さらにレポーターを用いた発現解析により、維管束篩部で観察されるFTの発現パターンとあわせて、FTとTSFによる花成制御経路統合の場として維管束篩部の重要性を提示した。本研究は、花成制御モデルにおける新たな経路統合遺伝子の存在を示し、また、花成制御モデルの空間的な側面を明らかにした。TSFはFTとともに永らく探索され続けたフロリゲンの分子実体の少なくとも一部であると考えられる。