日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
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タンパク質合成系の酸化ストレス傷害とレドックス制御
*西山 佳孝小島 幸治大下 将久堀 徹林 秀則
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p. S016

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抄録
強光などの環境ストレスは、光合成反応の副産物である活性酸素の発生を促進し、酸化ストレス傷害を引き起こす。近年の研究により、活性酸素は光化学系の修復に必要なタンパク質の新規合成を翻訳伸長反応の過程で阻害することが明らかになっている。したがって、翻訳伸長に関与する何らかのタンパク質が活性酸素のターゲットになっていることが推測される。私たちは、ラン藻Synechocystis sp. PCC 6803からin vitro翻訳系を作製し、タンパク質合成系の酸化ストレス傷害のメカニズムを生化学的に解析した。翻訳伸長因子EF-Gに焦点を絞って、in vitro翻訳系の酸化ストレス傷害との関係を調べた結果、EF-Gが活性酸素のターゲットになっていることが明らかになった。さらに、SynechocystisのEF-Gを別種のラン藻Synechococcus sp. PCC 7942で過剰発現させると、タンパク質合成能および光独立栄養的生育における酸化ストレス耐性が増大した。この結果からEF-Gの酸化ストレス感受性が細胞の諸機能に影響していることが推察される。また、EF-Gはその酸化還元状態で機能が制御され、チオレドキシンと相互作用することが明らかになった。以上のことから、タンパク質合成系はEF-Gのレドックス状態により制御され、酸化ストレス条件下ではEF-Gの酸化によって阻害されることが示唆される。
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© 2007 日本植物生理学会
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