抄録
我々は植物ホルモンを基質にする酵素の探索過程で、ジベレリン(GA)の生合成または代謝に関わると考えられる新規シトクロームP450遺伝子をシロイヌナズナより見いだした。本遺伝子を発現する酵母組み替え体に各種のGAまたは前駆体を与え、その代謝産物をGC-MSを用いて分析した。その結果、ent-カウレン酸を基質とした場合ステビオール(ent-13-ヒドロキシカウレン酸)が主要な産物として検出された。一方、GA12を基質とした場合、主要な産物として12α-ヒドロキシGA12と少量の13-ヒドロキシGA12(GA53)が検出された。本酵素遺伝子を過剰発現するシロイヌナズナは、GA合成不全変異体に似た半わい性を示した。この過剰発現体のGA内生量を測定したところ、活性型GA4を含む13位非水酸化GAの量が減少し、逆に活性型GA1(シロイヌナズナにおいてはGA4よりも生物活性が弱い)を含む13位水酸化GAが増加していることが明らかになった。すなわち、本酵素遺伝子を利用することにより、植物体内のGA4とGA1の比率を変化させることが可能であることが示された。