抄録
【目的】)有機物の施用によって土壌中の無機態窒素量が少なく推移するにも関わらず,旺盛な生育を示す作物種が存在する。この実験結果から,有機態窒素の吸収が示唆され、可給態窒素の本体であるPEON(Phosphate-buffer Extractable Organic Nitrogen)の吸収が示唆された。本報告では,有機物施用による増収効果を確認し、このPEONの直接的吸収について検証した。
【方法】 実験1:ポット条件下で,無窒素区、硫安区、硫安+グルコース区(C/N比は10)、菜種油粕区を設け、チンゲンサイ,レタス、シュンギクを栽培した。4週間栽培し,植物の窒素吸収量、土壌の無機態窒素量の推移を観察した。実験2:石英砂を培地とし, 精製したPEONを添加して、上述の作物を栽培した。対照区に蒸留水(-PEON)区、硝安区を設けた。14日間栽培後、植物体を採取し,新鮮重を測定した。また、採取した植物体はパラフィン切片を作製した後、抗PEONウサギIgG抗体、Hrp標識二次抗体を処理し、PEON局在部位をDAB発色させて、顕微鏡観察した。
【結果】)実験1:チンゲンサイは硫安+グルコース区と菜種油粕区で窒素吸収が旺盛で、シュンギク、レタスは硫安区と菜種油粕区で窒素吸収が多かった。実験2:砂耕条件下では、3作物とも硝安区よりPEON区での生育が良かった。顕微鏡観察から、レタス根の細胞間隙にPEONの局在と思われるDAB発色が観察された。