抄録
二酸化窒素(NO2)曝露したシロイヌナズナ葉のニトロ化されたタンパク質を網羅的に解析したところ、ほとんど全てPSII表在性タンパク質PsbOまたはPsbPであった。この事実を契機として詳細を検討した結果、我々は、「光・窒素・酸素ストレスによってPSII酸素発生中心が蒙る損傷の分子的実体は、PsbO/PsbPのチロシン残基のニトロ化である」との仮説を考えている。
プロテオミクス:NO2曝露したシロイヌナズナ(4週齢)葉から抽出したタンパク質を二次元電気泳動で分離、抗ニトロチロシン(3-NT)抗体を用いてウェスタンブロット解析した結果、>1000個のSYPR Rubyで染色されたタンパク質スポットの内、7個が3-NT抗体と反応した。MALDI-TOFMS分析、PMFによりニトロ化タンパク質を同定した結果、全てPSII表在性タンパク質PsbOまたはPsbPに帰属された。単離葉緑体を用いた解析からも同様な結果が得られた。
酸素発生測定:シロイヌナズナ単離チラコイド膜を用いて、酸素発生量とタンパク質ニトロ化に対すNO2曝露の効果を解析した。その結果、PsbO/PsbPのニトロ化と酸素発生には負の相関が認められた。
光および活性酸素の効果:NO2曝露処理によるPsbO/PsbPのニトロ化は、光および活性酸素処理により促進されることが新たに分かった。