抄録
植物由来のFtsHプロテアーゼが欠損した植物は、斑入りの表現型を示すことが知られている。これは葉緑体の形成と維持に本酵素が重要な働きを担っていることを示している。植物のFtsHプロテアーゼは、葉緑体のチラコイド膜に存在し、光合成反応などで生じた異常タンパク質の代謝回転に大きく関与している。しかし、本酵素には十分な精製系も発現系も存在しないため、生化学的な背景を確立することが困難である。材料はタバコ由来のFtsHプロテアーゼを用いた。この酵素のプロテアーゼドメインをPCRによって増幅し、大腸菌における発現系であるpET21aに導入した。導入した遺伝子の配列はDNAシーケンスによって確認し、発現したタンパク質のN末端が予定した配列であることもペプチドシーケンスによって確認した。発現させたタンパク質は、インクルージョンボディーとなったが、尿素変性と透析によるリフォールドを行うことで活性をもつ酵素が得られた。基質タンパク質はFITC(fluorescein isothiocyanate)が結合したFITC-カゼインを用いた。FITC-牛血清アルブミンは基質とならず基質特異性がみられた。最適pHおよび各種イオンの要求性の解析も行ったところ、弱アルカリ性で最適pHを示し、高濃度のマグネシウムイオンを要求することが明らかとなった。現在さらなる解析を進めている。