日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第49回日本植物生理学会年会講演要旨集
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クロマチン免疫沈降法を用いたC. merolae葉緑体における光応答転写制御の解析
*華岡 光正川上 隆之今村 壮輔田中 寛
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p. 0704

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抄録
葉緑体には、原始シアノバクテリアの細胞内共生に由来する独自のゲノムとその発現系が残されているが、共生後の進化の過程で多くの遺伝子が失われたとともに、環境応答などの制御系は核による支配を強く受けるようになった。単細胞紅藻Cyanidioschyzon merolaeは、その葉緑体ゲノムや転写制御系の解析から共生当初により近い状態を反映していると考えられ、核によるものとは別の、葉緑体自律的な制御系が今なお残されていると予想される。そこで本研究では、葉緑体ゲノムにコードされた原核型転写因子Ycf27の解析を通じて、C. merolaeの葉緑体における光に応答した特徴的な転写制御システムの解明を目的とした。
これまでに、暗条件下で培養した細胞から単離した葉緑体に対して光照射を行った結果、ycf27psbDの転写活性が特異的に上昇することがrun-on転写系により示された。この制御には、二成分制御系のレスポンスレギュレーターであるYcf27が関与することが予想されたが、その詳細については不明であった。上記と同様の光条件下におけるYcf27の結合についてクロマチン免疫沈降法を用いて調べた結果、Ycf27のこれらプロモーターへの結合は暗条件下で強く、光照射により弱まることが分かった。この結果は、葉緑体が自律的な光応答系を介して特定の遺伝子群の転写を制御していることを強く示唆している。
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© 2008 日本植物生理学会
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