抄録
BLUFドメインは、フラビンを結合する青色光センサードメインである。シアノバクテリアSynechocystis sp. PCC6803では、BLUFタンパク質が走光性の制御を行う。BLUFタンパク質は、室温での光照射によりフラビンの吸収スペクトルが約10 nmの長波長シフトし、暗所で元へ戻る光反応サイクルを示す。フラビン近傍のGln50とTyr8残基が、この光反応サイクルに重要な役割を持つことが、これまでの室温付近での反応解析から報告されている。本研究ではThermosynechococcus elongatus BP-1が持つBLUFタンパク質TePixDの反応解析を行った。低温分光測定によるTyr8変異型TePixDの測定から、以下の結果を得た。(i) Y8FとY8A変異型でも、80 K での光照射により長波長シフト型の吸収変化がトラップされ、野生型と類似した反応が見られた。(ii)ただし、Y8F変異型での長波長シフト形成の反応収率は、野生型より43倍低く、収率は約半分であった。(iii) 一方、150 K、283 Kでは、Y8FとY8A変異型ともに長波長シフト型の吸収変化はトラップされず、光還元が起こった。これらの結果から、Tyr8残基は正常な反応を効率的に進めるための役割を持つと考えられる。野生型の低温での光反応過程と比較し、光シグナル変換の分子機構を議論する。