抄録
植物において病原体の感染と形態形成は密接な関係にあると考えられてきたが、その分子的性状はわかっていない。本研究は抵抗性反応と形態形成に関わるシグナル伝達経路の関係について分子レベルで明らかにすることを目的とした。我々はシロイヌナズナ半優性変異体uni-1Dでは、抵抗性(R)遺伝子の多くが属するNB-LRRファミリーの遺伝子に機能獲得型変異が生じており、変異型UNIタンパク質がサリチル酸経路を介して抵抗性反応を活性化し、それとは独立に形態異常を引き起こす経路を活性化していることを報告してきた。本会ではRタンパク質とサイトカイニン(CK)経路の関係について報告する。uni-1D変異体ではCK応答性遺伝子ARR4, 5, 6の高発現およびCK量の増加が見られた。CK分解酵素遺伝子CKX1の過剰発現によりuni-1D変異体における異所的腋芽形成およびPR-1の高発現が抑制された。また、Rタンパク質RPS2が恒常的に活性化しているrin4変異体でも、uni-1D変異体と同様に異所的腋芽形成、ARR5およびPR-1の高発現が見られた。これらの結果はRタンパク質シグナル伝達経路と、形態形成に関わるCK経路との密接な関係を示唆する。本会では形態異常を部分的に抑制するuni-1D抑圧変異がERECTA遺伝子の機能欠損変異であることも報告し、形態形成と抵抗性反応の関係について考察する。