抄録
花芽における器官の構造・機能等に寄与する転写調節因子は数種報告されているが、転写調節制御を受ける酵素遺伝子が担う生理機能に関する知見はあまり得られていない。転写調節因子およびその制御を受ける遺伝子が関与する代謝経路の全貌を明らかにするには、マイクロアレイなどによる発現相関解析と共に代謝物レベルでの包括的な解析が重要となる。本研究は、シロイヌナズナの花粉形成に寄与する転写調節因子および発現に相関がみられる機能未知シトクロム P450 遺伝子に着目し、メタボロミクス手法によりこれら遺伝子群の共発現ネットワークを代謝物レベルで解析することを目的とした。
我々はこれまでに FT-ICR/MS (フーリエ変換イオンサイクロトロン型質量分離装置) を用いたメタボローム一斉解析ツールを確立してきた。FT-ICR/MS は超高分解能を有し、化合物の分離操作なしで生体内の代謝物を包括的、かつ高速に解析することが可能である。そこで花芽において共発現している転写調節因子およびシトクロム P450 遺伝子の過剰発現 T87 培養細胞を作出し、FT-ICR/MS によるノンターゲット型代謝プロファイリング分析に供した。現在、得られた代謝プロファイルを多変量解析に供し、各遺伝子の過剰発現による代謝変動の相関を解析中である。