抄録
シロイヌナズナにおいて、26Sプロテアソームの各サブユニットの欠損が引き起こす表現型は一様ではない。このことは、サブユニットの組み合わせにより複合体の性質が異なる可能性、または個々のサブユニットが単独で機能を有する可能性を示唆している。我々は、種子発芽においてABA高感受性を示すシロイヌナズナのahg12変異体を分離し、26SプロテアソームのサブユニットであるRPT5aをコードする遺伝子にミスセンス変異を同定した。ahg12変異体はABA高感受性以外にも休眠性の低下や光による種子発芽誘導性の低下など多面的な表現型を示し、その組み合わせは他のサブユニットの変異体とは異なっていた。また、ahg12変異体では26Sプロテアソームの基本的な機能には大きな影響がないと考えられ、RPT5a欠損株とも表現型が異なることから、RPT5aの機能の一部のみが変化していると考えられる。ahg12変異はこれまでに報告のない優性のミスセンス変異であるため、サブユニットの分子機能に関して、欠損変異の解析では得られないような情報の取得が期待できる。現在、ahg12変異がタンパク質分解の選択性に寄与する可能性について検証し、表現型とタンパク質分解の接点を探索している。