抄録
水生光合成生物であるクラミドモナスは環境中のCO2濃度が低下すると無機炭素濃縮機構(CCM)を誘導し、低CO2ストレスに順化する。これまでにLciB遺伝子がCCM誘導時に強く発現誘導され(Yamano et al., Plant Physiol.2008)、LciB欠失変異株では無機炭素輸送能が減少する事が報告されているが (Wang and Spalding, PNAS 2006)、膜貫通構造や既知の輸送体と相同性を持たないLCIBタンパク質がどのように無機炭素輸送に関わるのかについては明らかでない。我々は前年会において、LCIBがピレノイド構造の周囲に局在することを報告した。水生光合成生物の葉緑体内に観察されるピレノイドは、Rubiscoが集合した炭酸固定の場であることから、LCIBは無機炭素のRubiscoへの輸送過程に関わると推測されている。本発表では,このLCIBが環境中のCO2濃度と光に依存して局在が変化することを見出したので報告する。低CO2条件においてLCIBはピレノイド周囲に局在するが、CCMが抑制される高CO2条件下や暗黒下では葉緑体内に拡散した。またLCIBは、アミノ酸配列が類似するLCICとin vivoで相互作用し、分子質量が約350 kDaの高分子複合体を形成した。細胞内局在性からLCIB/LCIC複合体の機能について議論したい。