日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第50回日本植物生理学会年会講演要旨集
会議情報

シロイヌナズナのみどりの香り生成経路はジャスモン酸生成経路と発現部位を棲み分けている
*松井 健二松木 敦
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 0075

詳細
抄録
植物オキシリピン生成経路はリノレン酸13-ヒドロペルオキシドから生成物特異性の異なるシトクロームP450酵素によって分岐している。みどりの香り関連化合物は脂肪酸ヒドロペルオキシドリアーゼ(HPL)が、またジャスモン酸はアレンオキシド合成酵素(AOS)がその分岐点に位置している。みどりの香り関連化合物は植物の病虫害に対する直接防衛と間接防衛に、またジャスモン酸はシグナル物質として病虫害抵抗性や花芽の成熟を担っている。HPL、AOSともに花芽で多く発現し、また機械傷やジャスモン酸処理によって強く誘導される。また、両酵素とも色素体に局在している。共通の基質から分岐する状態で各生成物量がどのように制御されているのかは明らかでない。我々はGUS遺伝子をレポーターとしてHPL、AOS発現の組織特異性について検討した。その結果、花芽でHPLは柱頭、花糸、がく片で強く発現していたがAOSは葯で強く発現していた。HPLの花芽での発現はcoi1では抑制された。葉に機械傷を与えるとHPLは葉の周縁部で、AOSは主脈で強く誘導された。また、ジャスモン酸処理によってもHPLは葉の全体で均一に誘導されたが、AOSは維管束系で強く発現された。こうした結果から、HPLとAOSは発現部位を棲み分けることで基質の競合を避け、最終生成物量を適切に制御していることが示唆された。
著者関連情報
© 2009 日本植物生理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top