抄録
酸性土壌に於ける化学ストレス物質であるアルミニウムイオン(Al3+)は、細胞伸長阻害や細胞死の誘発を通じて根の伸長を阻害する。一方、Al3+耐性植物に於いてAl3+は根からの有機酸の放出を誘因し、リンゴ酸に代表されるこれら有機酸は錯体の形成によりAl3+を無毒化する。
これまでの研究に於いて我々は、コムギからAl3+によって活性化されるリンゴ酸輸送体、ALMT1(Al-activated Malate Transporter 1)を単離同定した。ALMT1は細胞膜に局在する膜蛋白質で根端からのリンゴ酸放出を行う分子であり、Al3+耐性、酸性土壌耐性に寄与する中心因子であることを明らかにしてきた。本研究では、Al3+によるALMT1活性化に関与する分子機構を明らかにする目的で、種々の点変異を導入したALMT1をアフリカツメガエル卵毋細胞に発現させた後、二電極膜電位固定法及びパッチクランプ法を用いた電気生理学的機能解析を行った。これらの成果と共にAl3+によるALMT1活性化の分子機構について報告する。