抄録
タバコにおいては細胞質分裂を制御するNACK-PQR経路が存在する。この経路では、キネシン様タンパク質NACK1との結合によってNPK1 MAPKKKが活性化し、下流のNQK1 MAPKK、NRK1 MAPKの活性化を引き起こす。Arabidopsisの持つ10個のMAPKKのうち、ANQ/AtMKK6は、NQK1と最も高い相同性を示す。anq変異体は細胞質分裂に異常を示した。ANQは細胞分裂が盛んな組織で高い発現を示した。ANQは細胞質分裂装置であるフラグモプラストの赤道面に局在した。これらのことはANQがArabidopsisの細胞質分裂を直接、正に制御していることを示している。我々は、酵母細胞中でANQが、NACK1およびNPK1と高い相同性を示す、HINKEL/AtNACK1およびANP1またはANP3の存在下で、MAPKKとして機能することを明らかにした。またin vitro活性化および酵母ツーハイブリッドの系において、グループBに属するMAPKがANQの下流で機能する可能性が示された。ArabidopsisではHINKEL-ANP1、ANP3-ANQ-グループB MAPKというカスケードが存在すると考えられる。このカスケードの細胞質分裂における役割について考察する。