抄録
アミロプラストはデンプンの合成と蓄積に特化した色素体である。葉緑体と同様に二重包膜を持ち、細胞内で二分裂によって増殖する。従来、色素体分裂に関する分子レベルの研究は主に葉緑体を用いて行われてきた。しかし、「葉緑体モデル」が非緑色色素体にも当てはまるか否かについては、まだ十分に検証されていない。本研究ではシロイヌナズナのアミロプラスト増殖機構に着目した。
近年、我々はアミロプラスト分化のダイナミクス解析にシロイヌナズナの珠皮が有効であることを見出している(昨年度大会発表)。4種の葉緑体分裂異常変異体(arc5、arc6、minD、minE)及びストロマ局在性蛍光タンパク質発現系統を用いて珠皮アミロプラストの分裂表現型を解析したところ、葉緑体分裂位置異常を引き起こすminD変異や分裂アレストをもたらすarc5変異は、アミロプラスト増殖に殆ど影響しないことが判った。一方、葉緑体分裂が阻害されるminE変異体やarc6変異体では、細胞中にさまざまな大きさのアミロプラストが形成されていた。これらの結果は、アミロプラストと葉緑体の分裂制御は大きく異なることを示唆している。今回さらに、minEとarc6両変異体において、FtsZリングがストロミュール中に形成される一種の分裂位置異常が起こっていることが判明した。本発表では、色素体複製におけるストロミュールの役割について議論する。