抄録
光化学系II複合体(PSII)の結晶構造解析はこれまで原核生物のシアノバクテリアについて行われてきたが、真核生物由来のものについては報告されていない。また紅藻PSIIには、シアノバクテリアに存在しない、20kDaの表在性タンパク質が結合している。そのため本研究では、真核藻類である紅藻由来PSIIの結晶構造解析を目指している。昨年度の本年会において、我々は紅藻Cyanidium caldarium由来PSIIについて、分解能3.8-4.0Åの結晶化について報告した。今回、精製と結晶化条件の改良、及び結晶の脱水処理を行うことにより分解能を3.5Åに向上させることに成功したため、その詳細を報告する。析出した結晶を脱水処理することにより、3.5Å分解能の回折データを与える結晶が得られた。得られた結晶の空間群はP212121でシアノバクテリア由来PSII結晶と同じであったが、格子定数はa=209.2Åb=237.5Å, c=299.8Åであり、シアノバクテリアのものと大きく異なっていた。収集したX線回折データを用い、シアノバクテリアのPSII二量体構造をサーチモデルとして分子置換法を行った。その結果、紅藻PSII結晶中の分子パッキングには、結晶格子中の非対称単位に2つのPSII二量体、単位格子中に16個のPSII単量体が存在していることが明らかになった。