抄録
シロイヌナズナは生育環境に適応して形態を変化させる。特に高温条件では、低 R/FR条件下や低光量条件下と同様に、著しい胚軸伸長と葉柄伸長ならびに葉面積の減少が観察される。我々は、高温による形態変化機構を分子レベルで解明することを目的として研究を行っている。
本発表では、まず、高温条件下で見出される葉柄などの伸長成長が高光量条件下では観察されず、高温条件における形態変化が光量依存的であることを報告する。このことは、形態形成において、光シグナルと温度シグナルがクロストークしていることを示唆している。これに関わる遺伝子を探索するため、28℃という生育条件においてスクリーニングを行い、高温による胚軸伸長や葉柄伸長を示さない遺伝子欠損株を単離した。単離した遺伝子欠損株の一つでは、 Phytochrome Interacting Factor4 (PIF4)遺伝子にT-DNAが挿入されており、 PIF4の発現が転写レベルで抑制されていた。また、野生株において、22℃で生育させた場合と比較して28℃では PIF4 mRNA量が増大していることが分かった。これらの結果は、温度上昇に伴うシロイヌナズナの形態変化には、少なくとも PIF4の機能亢進が寄与していることを示している。