抄録
phyBが関与する生理応答の一つである避陰応答とは、R/FR比が低い(陰)環境下にある植物が、光をより受けるために茎や葉柄の伸長を促進させる応答である。この応答は、植物を明所から暗所に移す直前にFRを照射し、安定なPfrを全てPr型に戻す光処理(EOD-FR)によってもみられる(Franklin, 2008)。シロイヌナズナの避陰応答においては、a;芽生えでは胚軸伸長が、ロゼット葉では葉柄伸長が促進される、b;転写因子であるHFR1やATHB-2の発現上昇が早い段階でみられる、c;数時間以内にオーキシン関連遺伝子の発現上昇がおきることなどが知られている。しかし、避陰応答における器官・組織間制御機構はよく分かっていない。そこで本研究では、EOD-FR処理をロゼット葉の葉柄と葉身に部分的に施し、葉柄伸長や遺伝子発現にいずれの部位のphyBが関わっているのか調べた。4つの照射条件(a;葉身と葉柄、b;葉身のみ、c;葉柄のみ、d;処理なし)の効果を比較したところ、葉身に照射した場合(aとb)に葉柄伸長と葉柄でAuxin応答性遺伝子の一つであるIAA6の発現上昇が起きることが分かった。これらの結果より、主要なEOD-FR感知部位は葉身であり、葉身から葉柄へ向けた器官・組織間シグナル伝達の存在が示唆された。現在、同様の検討を芽生えの子葉と胚軸を用いて解析中であり、その結果も併せて報告する。