日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第50回日本植物生理学会年会講演要旨集
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硝酸同化コストと窒素収支の器官依存性
*白井 貴之蜂谷 卓士寺島 一郎野口 航
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p. 0180

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抄録
植物では多くの場合、窒素は土壌から硝酸態として吸収され、還元されてアミノ酸へと同化され、必要な器官へと転流される。この一連の同化反応には多くの還元力が必要である。この反応経路のうち、硝酸還元酵素(NR)に触媒される硝酸から亜硝酸への還元反応以外は色素体で行なわれる。光照射下の光合成器官では必要な還元力とATPを光合成系から直接得ることができ、反応のためのコストを抑えることができる。しかしこの同化反応に関わる酵素群は非光合成器官においても存在し、実際に硝酸還元が行われている。この硝酸還元の器官依存性は、種、環境条件、成長段階によって大きく異なるが、この違いの意義は未だ不明である。本研究では植物個体の各器官の硝酸還元量と同化された有機態窒素の転流量を詳細に調べることで、硝酸還元の場に関する定量的理解のためのモデルを確立することを目的とした。材料として水耕栽培したキク科ヒャクニチソウを用いた。NRの反応は一連の窒素同化反応における律速過程であるので、ソース葉、シンク葉、根、茎におけるNR活性の日周変化を測定し、それらの積分値を硝酸同化量とした。同時に有機態窒素量の時間変化を測定し、NR活性の積分値と有機態窒素量の増分値から転流量を求めた。これらのデータをもとにして、各器官が有機態窒素をどの程度自立的に同化しているか、また非光合成器官で硝酸還元を行う利点は何か、という問題について考察する。
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© 2009 日本植物生理学会
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