抄録
根粒菌とマメ科植物の共生関係が成立し、窒素固定活性を発現するまでには様々なタンパク質が関与し短い期間で大規模に変化している。ダイズ根粒菌バクテロイドタンパク質のプロテオーム解析から同定したBj880遺伝子は、真核生物COX17様なCytochrome C oxidase (CcO) へCu輸送を媒介する金属シャペロンCOX17が保存する配列(H(M)X11MX22HXM)を保有していた。この遺伝子を欠損させたBj880変異株をダイズに感染させると、窒素固定活性の低下が確認された。さらにBj880変異株感染ダイズのバクテロイドシトクロームCオキシダーゼ活性の低下も確認された。真核生物ではミトコンドリアへの銅輸送のため、COX17は、Sco1を介してシトクロームCオキシダーゼへ輸送する。そこでダイズ根粒菌からSco1ホモログであるBj131を検索し、Bj880-131二重変異体の作製を行った結果、顕著な窒素固定活性の低下が確認できた。感染後28日目のバクテロイドを抽出後、CcO活性を測定した結果、Bj880-131 のCcOは、ほとんど検出できなかったが、free living では野生株と変わらないCcO活性を示した。以上の結果から、Bj880はバクテロイド下で誘導される金属シャペロンであり、Bj880で輸送されたCuはBj131を介してCcOへCuを受け渡していると予想される。