抄録
高速液体クロマトグラフィー(LC)-質量分析(MS)において、検出されたピーク化合物を推定するためには、1) イオン化状態(付加体)の判別とそれに基づく分子量の推定、13C同位体ピーク、多価体ピーク、分解ピークの判別など、ピークを特徴づける情報の収集、2) MS/MS分析やUV吸収による部分構造の推定、3) 化合物データベースや文献の調査を元に、これらの総合評価による分子構造の推定を行うという、研究者による高度な判断プロセスが必要である。このため、検出されたピークすべてを網羅するような解析には莫大な時間と労力が必要であり、メタボロームの網羅性を拡張することを困難としている一要因となっている。そこで我々は、遺伝子配列解析におけるBLASTプログラムの様に、取得した分析データの解釈を加速することを目指して、労力をかけて行われたピークの解釈(アノテーション)情報を蓄積し参照できる新たなデータベースの構築を進めている(KOMICS, http://webs2.kazusa.or.jp/komics/)。この講演では、LC-フーリエ変換イオンサイクロトロン(FT-ICR)-MSによる分析結果をもとにアノテーション作業を効率化するためのソフトウェアPowerFTの開発と、KOMICSの構築について発表する。