抄録
塩や乾燥などの水分ストレスに応答して植物のラフィノース属オリゴ糖(スタキオース,ラフィノース)の蓄積が促進され,適合溶質,酵素や生体膜の保護や抗酸化作用に機能することが明らかとなっている.ラフィノース属オリゴ糖はUDP―ガラクトースとmyo―イノシトールを基質とするガラクチノール合成酵素(GolS)により生成したガラクチノールから合成される.シロイヌナズナは多数のGolS遺伝子を持ち,成熟中の種子や乾燥,塩ストレスや低温に応答して特異的なGolS分子種が誘導されることが報告されている.我々はトマトESTデータベース MiBASE (かずさDNA研究所) の部分長GolS配列を元にトマトMicro-Tom (Solanum lycopersicum L.) からガラクチノール合成酵素遺伝子SlGolS2の全長cDNAを単離した.これまでに報告されている種子特異的に発現するトマトのガラクチノール合成酵素LeGolS1と異なり,SlGolS2 mRNAは高温ストレス,低温および塩ストレスにより植物体で一過的に誘導されることを示した.現在,SlGolS2の発現誘導メカニズムにおける植物ホルモンと活性酸素の役割について解析を進めるとともに,全長SlGolS2遺伝子をGST融合タンパク質として発現・精製し,その酵素的性質の解析を進行中であり,それらの結果についても併せて報告する.