抄録
シアノバクテリアSynechocystis sp. PCC 6803において、光化学系I遺伝子群は、弱光下で高発現を示す一方、強光下では統一的かつ迅速に転写が抑制される。これまでの研究で我々は、各サブユニット遺伝子がコアプロモーター領域の直上流にHLR1(high light regulatory 1)配列を持つこと、この領域にOmpR型レスポンスレギュレーターRpaBが結合することにより、弱光下での転写が正に調節されていることを明らかにした。しかし、反応中心サブユニットをコードするpsaAB遺伝子の場合、独立した強光応答を示す二つのプロモーターを持つこと(Muramatsu and Hihara, Plant Cell Physiol. 47: 878-890, 2006)、すでにRpaBの特異的結合が示された領域(上流プロモーターのコア領域直上流)に加え、更に上流の3箇所にHLR1配列が存在すること、等から、他のサブユニット遺伝子とは異なる複雑な転写調節メカニズムが存在することが予想される。これまでに、上流3箇所のうち、2箇所へRpaBが結合することを見出しており、現在、これら複数のHLR1配列が、psaAB遺伝子の二つのプロモーターの活性調節にどのように寄与しているかを明らかにするために、HLR1配列に変異を導入してのレポーターアッセイを進めている。