抄録
【目的】植物のストレス応答や防御に関与する多くの遺伝子発現制御に選択的スプライシング機構が関与していると考えられる。我々はシロイヌナズナの強光応答性の選択的スプライシング制御因子の一つであるセリン-アルギニンリッチ(SR)タンパク質、atSR30およびatSR45aが主要な役割を果たしている可能性を見いだした(Plant Cell Physiol. 48: 1036-1049, 2007)。そこで本研究では、シロイヌナズナ遺伝子破壊株を用いてatSR30およびatSR45aによるスプライシング制御機構の生理的意義の解明を試みた。
【方法・結果】atSR45a破壊株では強光処理下でのatSR30の発現量が、atSR30破壊株ではatSR45aの発現量が野生株と比較して増加していた。さらに、個々の破壊株では表現型に変化が認められなかったが、二重遺伝子破壊株(WKO sr30/sr45a)は通常条件下で矮性を示した。また、WKO sr30/sr45aにおいて熱ショックタンパク質(HSP)であるHSP70, HSP17.4, およびHSP101の発現量が減少していた。以上より、atSR30およびatSR45aはHSPの発現制御に関わる転写因子の選択的スプライシングの制御に協調的に関与していると考えられた。