日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第50回日本植物生理学会年会講演要旨集
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栄養飢餓条件下におけるイネのストリゴラクトン生産とシュート分枝の関係
*梅原 三貴久花田 篤志吉田 聡子秋山 康紀有手 友嗣武田(神谷) 紀子真籠 洋神谷 勇治白須 賢米山 弘一経塚 淳子山口 信次郎
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p. 0256

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抄録
ストリゴラクトンは、さまざまな植物の根から分泌され、根寄生雑草の種子発芽刺激物質として、また宿主植物に無機栄養を供給するアーバスキュラー菌根菌(AM菌)の菌糸分岐促進物質として作用する化合物である。最近、我々は、イネおよびシロイヌナズナの分枝過剰突然変異体を用いて、ストリゴラクトンが植物の分枝を抑制することを明らかにした。しかしながら、根圏シグナル物質であるストリゴラクトンがなぜ植物の分枝を抑制するのかよく分かっていない。ストリゴラクトンの生産量は無機栄養、特にリン酸が欠乏すると増加することが知られている。これは、AM菌を活性化させるための宿主植物の生存戦略であると考えられている。一方、貧栄養環境下で分枝を増やすことは植物にとってコストがかかる。したがって、ストリゴラクトンは、貧栄養環境において、AM菌の活性化と同時にその情報を地上部へ伝達して分枝を抑制し、無機栄養の利用を効率化させる役割を担っていると考えられる。そこで、貧栄養環境下のイネにおけるストリゴラクトンの生産量と分枝の頻度との関係を調査した。リン酸濃度の低下に伴うストリゴラクトン内生量の増加と、分枝抑制に相関が認められた。また、野生型の分枝が抑制される低リン酸環境においても、ストリゴラクトン欠損変異体の分枝は抑制されなかった。これは、ストリゴラクトンが栄養飢餓応答における植物の分枝制御に関与していることを示唆している。
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© 2009 日本植物生理学会
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