抄録
植物細胞において液胞は細胞体積の約8割を占めるオルガネラであり、膨圧形成、無機イオンや代謝産物の蓄積、不要となったタンパク質の分解など細胞内恒常性の維持に重要な役割を果たしている。その機能から液胞内にはさまざまな物質が存在すると考えられる。我々は、植物細胞より液胞をインタクトな状態で単離し、CE-MSとFT-ICR-MSを用いて、液胞に含まれる物質について網羅的な解析と物質の同定を進めてきている。その結果、これまで液胞には存在しないと思われていた有機リン酸化合物の存在が示された。代謝物質の解析とともに、シロイヌナズナ培養細胞(Deep株)より単離した液胞を用い、液胞膜と液胞内のプロテオーム解析も同時に進め、液胞内で同定されたタンパク質と代謝産物との関係について考察した。また、液胞膜のプロテオーム解析より同定された機能未知膜タンパク質について、過剰発現させた細胞を作製し、形質転換細胞より単離した液胞内に存在する物質について、野生型の液胞と比較解析を行った結果についても報告する。