抄録
マメ科のスペインカンゾウ (Glycyrrhiza glabra) はトリテルペノイド配糖体のグリチルリチンを生合成し、根やストロンに蓄積する。今までにその生合成経路に関しては多くの研究がなされてきたが、蓄積機構に関する知見は殆ど得られていない。そこで本研究では、グリチルリチン生産能を有しないスペインカンゾウ由来の培養細胞を用いて、グリチルリチン輸送の分子レベルでの解析を目的として、細胞レベルでの輸送活性及び、液胞輸送の生化学的解析を行った。細胞レベルでの解析の結果、グリチルリチンの輸送能がカンゾウに特異的なものであること、アグリコンであるグリチルレチン酸やアニオン輸送体阻害剤で輸送が阻害されること、膜のプロトン勾配が重要な役割を担っていることが示唆された。次にショ糖密度勾配遠心法で分離した膜ベシクルを用いてin vitroでのグリチルリチンの輸送について検討した。その結果、グリチルリチン輸送活性はATP依存性であった。液胞膜に富む画分についてより詳細な解析を行ったところ、pH変化により、輸送活性は変化しなかった。さらに阻害剤の効果について検討したところ、P型ATPase阻害剤であるバナジン酸とグリチルレチン酸により顕著な輸送活性の低下が見られた。現在、輸送体のエネルギー源や基質特異性などについて、更に詳細な解析を行っており、それらも合わせて報告したい。